EMSとは?プリント基板をするうえで知っておきたいメリットや歴史などを徹底解説

公開日:2026/01/26
ems

EMS(電子機器製造受託サービス)は、電子機器やプリント基板の製造を外部企業に委託するビジネスモデルです。製品ライフサイクルの短期化やコスト競争の激化が進むなか、製造体制を柔軟に構築する手段としてEMSを取り入れる企業が増えてきています。本記事では、EMSの基本的な仕組みからメリット、普及の背景までわかりやすく解説します。

EMS(電子機器製造受託サービス)とは?

EMSとは“Electronics Manufacturing Service”の略称であり、電子機器の受託製造サービスを指します。電子機器メーカーなどが自社で行っていた製造工程の一部もしくはすべてを専門の受託企業に委託する仕組みのことです

EMSの業務内容は多岐にわたります。これまでの製造に特化した下請けとは異なり、製品企画から設計、部材調達、製造工程まで一貫して行われるのが一般的です。

委託企業は製品企画や設計、販売に注力でき、受託企業は量産や工程管理のノウハウを活かして効率的な製造を行います。なかには、電子機器製造の機能のみをアウトソーシングするケースもあります。

近年では、少量多品種生産や短納期対応にもEMSが活用されるようになり、業種を問わず導入が進んでいます。

委託企業におけるEMSのメリット

EMSというビジネスモデルは、委託企業・受託企業の双方にとってメリットがあります。ここでは、委託企業におけるEMSのメリットを紹介します。

製造に関するコスト削減

EMSを利用する最大のメリットのひとつが、製造コストの削減です。自社で製造設備を保有する場合、設備投資や人件費、維持管理費が大きな負担となりますが、EMSの活用により大幅なコスト削減につながります

また、技術開発の工程も含めて委託するODMと比べると、受託企業との調整も最小限に抑えられます。そのため、設計や開発、マーケティングといった自社の強みにリソースを集中させることができます。

設備投資リスクの回避

電子機器分野は技術革新が早く、設備の陳腐化リスクが高いのが特徴です。EMSを利用すれば、高額な設備投資を行う必要がなく、技術トレンドの変化にも柔軟に対応できます。

新製品開発時も、量産前の試作から立ち上げまでをスムーズに進められるため、市場投入のスピード向上にもつながります

受託企業におけるEMSのメリット

次に、受託企業側のメリットを解説します。

調達コストの削減

EMS受託企業は、複数の企業から依頼を受けます。そのため、一社分の製品を生産するよりも多くの製品を生産します。

部品を一括調達することで、ボリュームメリットを生かして調達コストを抑えられます。安定した価格で部品を確保でき、供給リスクの低減にも寄与します。

技術ノウハウの獲得

多様な製品を手がけるEMS受託企業では、実装技術や品質管理、工程改善に関するノウハウが蓄積されます。これらの知見を活かすことで、製造品質の向上や歩留まり改善につながります。

その結果、受託だけでなく自社ブランドの製品開発にもつながります。実際に、EMSによる受託を受けていた企業がノウハウを活かして、自社ブランドの製品を販売するケースも少なくありません。

EMSの歴史

EMSの起源は1980年代にさかのぼります。当時のアメリカでは、日本で定着していた「下請け生産スタイル」が効率的なビジネスモデルとして広まりつつありました。アメリカだけでなく諸外国でも注目され、とくに台湾はトップシェアを誇っていました。

当初のEMSは設計・製造のみを担うケースがほとんどでしたが、90年代に入ると開発や物流管理など、幅広い分野をカバーするサービスへと進化していきました。とくにIT機器や通信機器分野で導入が進み、グローバル規模でEMS企業が成長していきました。

EMSが広まった背景

EMSが急速に普及した背景には、製品ライフサイクルの短期化が挙げられます。消費者の趣味嗜好の多様化や開発競争のグローバル化によって、企業は常に新しい製品の開発・生産が求められています。市場の変化に迅速に対応するためには、製造体制の柔軟性が不可欠です。

また、近年は市場における電子機器ニーズが増加傾向にあります。それに伴い、電子部品の高度化が急速に進んでいます。専門的な設備や技術を自社で賄うより、専門企業に委託した方が効率的であると判断する企業が増えたこともEMSが広まった背景として挙げられます。

EMSによって何が変わった?

EMSの誕生によって、製造受託企業の立ち位置は大きく変化しました。従来の製造受託企業は、電子機器メーカーから支持された内容にもとづき部品を実装し、プリント基板を製造するのが主な役割であり、いわゆる下請け企業として位置づけられていました。

しかし、1980年代にEMSという考え方が広まると、資産圧縮や生産効率向上を目的として、メーカーが自社の生産・実装部門をEMS企業へ売却する動きが加速します。複数企業の生産機能がEMS受託企業に集約されることで、単なる作業請負ではなく、生産工程そのものを担う業態へと進化していきました。

その結果、EMSは基盤への部品実装だけでなく、量産前の試作、基盤設計、部品調達、品質管理といった幅広い工程を担うようになりました。現在では、メーカーが製品企画や基本設計を行い、生産フェーズは試作段階からEMSに任せるスタイルが一般的です。

生産に関わる工程をワンストップで提供できる存在へと成長したことで、EMSは製造分野における欠かせないパートナーと位置づけられるようになりました。信頼できるEMSを活用することで、製品品質や事業成果の向上にもつながります。

EMSを選ぶ際のポイント

EMSを導入するにあたっては、価格や納期だけでなく、長期的に安心して任せられるパートナーかどうかを見極めることが重要です。ここでは、押さえておきたい3つのポイントを紹介します。

業務実績が多い

まず確認したいのが、これまでの業務実績です。プリント基板の実装や電子機器製造は、製品分野や用途によって求められる技術や品質基準が大きく異なります。自社製品と近い分野での実績が豊富なEMSであれば、工程設計や品質管理のノウハウが蓄積されており、トラブルの発生リスクを抑えやすくなります。

とくにEMSは、発注量が契約で取り決められているため、確実に納期までに生産できる能力があるかどうかが重視されます。

セキュリティー体制が整っている

EMSでは、設計データや試作品、量産前の製品情報など、機密性の高い情報を扱うケースが少なくありません。そのため、情報漏えいを防ぐためのセキュリティー体制が整っているかどうかは重要な判断基準となります。

情報管理のルールや設備面での対策、社内教育の有無などを確認し、安心して委託できる体制かを見極めましょう。

ロット調整が可能かどうか

製品の開発段階や市場状況によっては、小ロット生産や急な数量変更が必要になることもあります。試作から量産まで柔軟に対応できるEMSであれば、無駄な在庫を抱えるリスクを抑えられます。最小ロットや増減への対応力について、事前に相談しておくことが大切です。

まとめ

EMSとは、電子機器やプリント基板の製造を外部企業に委託するビジネスモデルのことです。製造現場において、コスト削減や生産効率向上を実現する有効な手段として注目を集めています。1980年代のアメリカで普及したビジネスモデルですが、現在では業種を問わず多くの企業が採用しています。一方で、委託先の選定を誤ると品質や情報管理の面でリスクが生じる可能性もあります。業務実績やセキュリティー体制、ロット調整への対応力も含めて総合的に判断し、自社に合ったEMSパートナーを選ぶことが、安定した製造体制の構築につながるでしょう。本記事が参考になれば幸いです。

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イメージ引用元:https://shisaku-kiban.com/引用元:https://www.p-ban.com/引用元:https://unicraft-jp.com/
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